ごり押しでナイト

自称音楽家(SETUZITU)ワタクシ清野の活動情報や雑談,その他諸々晒していくぞのコーナー♪♪♪
皆様,何卒よろしくお願いいたしもぉす!!!
雨降の楯という創作グループ立ち上げました。 僕のお話「Synchronized」がオーディオドラマとなりました! こちらから是非ご覧下さい→http://ametate.cranky.jp

2015年03月



「え、いや…ごめん、その。そういうのはちょっと…わからないんだ…」


「…そうですか…わかりました。さよならっ…!」



あぁ、また僕のせいで誰かが傷付いてしまった。これで今年何人目だろう。好きだと言ってくれることは嬉しい。だが、それで僕にどうしろって言うんだ。大体、見ず知らずの人間に、そんなことを言われても判断に困る。

「んなこまけーことはいーんだよ。てきとーに付き合っちゃえばてきとーに仲良くなるっしょ。」

「お前なー。僕は真面目に…」

「あーはいはいわかってるわかってるさ。でも結局そんなもんさ人間なんて。恋愛なんて。お前は美化しすぎなんだよ。想い合って惹かれあってそしてやがて結ばれる。いや、間違ってないし理想さ。ただ結局、理想は理想で、大体は第一印象がものを言う。人間は殆どの情報を視角から得ていて、更に性衝動は錯覚だ。なら騙されるのは必然だし、寧ろ正しい。どうだ、参考になったか?」

目の前で親友は高らかに笑って恋を説く。それでもし上手くいかなかった時に、つまり早い話あとだしジャンケンでノーを伝えた場合。やはりそれは人の気持ちを弄んだということにならないだろうか。そして結果自身の評価を下げてしまうだろう。


「そんなこと言ってー、誤魔化してるんでしょ?言っちゃえばいいんだって。他に好きな人がいるって。」

「…いやだよ、それは。もしその子が悪い子だったら、あいつにまで被害が出るかもしれない。」

そう、そうだ。あいつの事が、好きだと言ってしまえば、いい。いつのまにか仲良くなったバイト先の彼女にそう言われても、先ほど告げたように何かあったときに、しあいつに迷惑が掛かるかもしれない。それは避けたかった。可能性さえ、あってはならない。だから僕は、彼女に近付きさえしないのだ。

「…難儀な性格だね。」

「はは、自覚はあるよ。」

本当に愛しているのなら、当然考えることだ。自分自身がどうなろうと構わない。傍にいれなくてもいい。それは己の欲求だから。あいつの幸せを第一に考えた結果、僕と一緒にいない方があいつは幸せになれる。行き着いた結論、辿り着いた信念。

「まぁ、僕も昔同じようなこと考えていたからわかるよ。」

でもね、とかつて部活内でライバルとして争った、今ではすっかり相談相手になってしまった男は続ける。

「ようは、傷付けてしまうのが怖いんだ。自分のせいで。だから触れることも傍にいることも、想うことさえ誤魔化しているんでしょ?」

「…その、気持ちがないといったら嘘になるけど。」

「大丈夫。あいつもきっと、君を待ってるさ。言ってらっしゃい。傷付かないように守ってあげて、傷付けたら癒してあげたらいいんだ。」

なるほど、やはりかつてのライバル。似て非なる思想だ。そしてそれは、僕の求めた答えに限りなく近かった。


「それで漸く私のところへ来たのね。」



「…あぁ。うん。ごめん。」



「こんな人気のないところに呼び出して?チョー迷ったんですけど。」



「…ごめん。」



「ま、あんた不器用だからわかってたけどさ。」



「……」



「で、喋んないし。難儀ね。昔からずっと。」



「…ごめん。」



「………うがーーー!!もうっっ!!」





らぶれす。

(ふたりはまだ、愛を知らない。)










「おーつかれっしたー♪」

意気揚々とバイト先であるコンビニを後にする。ゴミ捨て場で集るカラス達を鞄で払ってから、自転車に跨がり発進する。すっかりルーチンワークと化した一日はもうすぐ終わっていく。そこになんの感慨もない。

私はよく嘘をつく。それはもう息を吐くように。騙そうって訳じゃない。その方が誰も傷付かずにすむからだ。

自転車で10分のアパート。鍵は空いていた。

「おつかれー。今日は早いねぇ」

「うーぃおつかれ咲。僕にもたまには早くかえって来たい日だってあるさ。」

そして嘘をつき続けた結果、彼は私の隣にいつもいて、私は彼の隣にいつもいた。彼がこの時間にいることが、ちょっとだけ違和感。凄く、不愉快。
そんなこと少しも顔に出さずに、さっとシャワーを浴びた。

「なぁ、エミ。今日は久々にさ……いいだろ?」

「うぇー?わったし疲れてんだけどなぁ…」

「んだよ!!いいだろーがよたまになんだからよ!!」

はじまった。普段の優しさはどこへやら。性欲とは恐ろしい。ただ、彼と私は似ている。嘘をつくところが。違うのは、彼の嘘は私にばれていて、私の嘘は彼にばれていないこと。

「んもぅ…しょうがないなぁ…」

いっそ殺してしまおうか。情事の最中、どうやって周囲を騙せば彼がいなくなっても不自然じゃない状態をつくって、彼を殺せるか考えた。考えていたら、下腹の痛みはなくなって、彼は眠っていた。

どこかよそでやってくれ。
私は、あんたみたいなイレギュラー、捕球する気、更々ないんだよ。

起き上がり何も纏わずに冷蔵庫からビールを取り出した。自分を騙すんだ。騙して、無かったことにしろ。

「こんな人生、無くてよかった。」

声が聞こえて振り替える。私の影。喋ってる。意味わかんない。

「私もそれが正解だと思う。なら、あなたの人生を私に頂戴?あなたは私と入れ替わって、変わることのない意識の中に沈んでいたらいいのよ。」

「……断るよ。私は、ウソつきだからね。」

呟いていた。月明かりが、部屋を包んで影はよりいっそう大きくなる。

「ならくだらねーことぴーぴー言ってんじゃねぇよ!!意味わかんねぇんだよてめーはよぉ!?知った気になって理解した気になって、とりあえず怠惰な人生おくりやがってよぉおお!!お前が生きてる間中、私はずっとこのままここにいるんだよ、動けねぇままよぉお!?あぁ!?いつまでも不幸ヅラしてっとぶっころすぞ!!ムカつくんだよぉおおおおお!!満たされてるくせしてよぉおおお!!何でも持ってるくせしてよぉおお!!!!」

「…うっさ。別に頼んでないから、嫌なら死ねよ。」

喚く影は、月明かりが部屋から消えたその時にいなくなった。わかってる。わかってるんだ。誰になんと言われても、誰が何を説こうと。

私は私自身を愛してる。嘘つきなんて、何て可愛いんだろう。変な男に愛されてまぁ、可哀想。ね、ほら私愛される条件が揃っているの。もっと愛でて、もっと掴んで離さないで?









……なんつって。










次の日、目覚めたら彼はいなかった。よかった。今日はいつも通り。そうやって美しいルーチンを、私は生きて、いろんなものを失いたい。
失うことは悲しいことじゃあない。
あることの方が、とても悲しいんだよ。



だから私は、今日も当たり前に嘘をつく。





-ルーチン-
(階段を上った先に、次の階があるとは限らない)





文字通りの喧騒。言葉通りの雑多な音。

そう、酷く雑多だ。馬鹿みたいに大声を上げ、自らの足で立つことも出来ず、擁護されるのが当たり前だと思っているおめでたい奴らが、間もなく最終電車の出る駅のホームに蔓延っている。俺もこんな醜く愚かに溢れかえるゴミ共と等しく人間であるということに嫌悪を覚えた。蛍光灯がきれかかっているその下で言葉は飲み下し思考する。何故、こんなにも俺は違うんだろう。等しくあるべきなのだろうか。間違っているのだろうか。あんな雑多どもが、正しいと言うのか。全くもって肯定出来ない。駅のホームに電車が飛び込んできた。黄色の点字ブロックの上に乗る勇気は俺にはない。勇気というのは偽善だ。結局それは力でも強さでもなく我が儘。欲求なのだ。こうありたい、こうあるんだ。それを具現しただけのこと。善の言葉にすげ替えて、まるでヒーロー気取りの子どものようだ。そう子どもと言えば、この電車が最終なのだが、行動を共にする彼女は未だトイレから戻らない。置いて帰るのも全然ありだが、それよりも罪悪感が勝ってしまい、俺は点字ブロックの少し手前から足を動かせずにいた。


「ごめん……こうた……おぇ、めっちゃリバってた…」


最終電車が過ぎ去った5分後、ノロノロとフラフラと俺の前にやって来たのが雑多な彼女優希だ。顔面蒼白な彼女はただのレストランでこれでもかとワインを体内に吸収した為、この様な愚かな姿を大衆に晒している。

「知ってるよ。…タクシーで帰ろう。車内で吐かれたら困るんだけど、もう全部出しきったかい?」

ガコン。漸く動いた足で自販機の水を買い手渡す。…蓋を開けることも出来ないのか。一度優希の手から水を奪い、口を開ける。ありがとうと一言呟いて水を勢いよく飲みはじめた。動く喉元が妙に艶かしい。そっと視線を外す。いつも快活な人間が弱っている姿はなんとも滑稽だ。

「っぷぁ、水ってこんな美味しかったっけ…?」

「美味しいよ、水は。いつも。」


少し回復したようだ。今のうちに改札を出てタクシーを拾おう。なんだ、これではまるで俺まで雑多ではないか。

「こうた。手。」

そう言って俺の手を掴む。心臓が一際大きく跳ねた。他人に触れられると起こる、条件反射みたいなものだ。体に悪い。そして俺の手を更に両腕で抱き抱え、寄り添う。寄り添うのも寄り添われるのもあんまり得意ではない。俺は一人で立って歩けるから。

「何?照れてるの?」

「そんなんじゃないよ。…優希は図々しいなと思ってね。」

誰かに支えられて、擁護されるのが当たり前だと思っているおめでたい奴ら。彼女もその一人。雑多なうちの一人。

「あーあー、今そういう小難しい話は受け付けませーん」

「別に難しいことではないさ。俺が今から使用とする話を、優希自身が難しいものと思い込むからそうかんじるだけで……っ!?」

一瞬何をされたかわからなかった。生暖かい柔らかいものが耳に触れたのだ。舐められた。遅れて理解する。その話はもういい、そういうことらしい。この程度の話にも耳を傾けられない彼女はやはり愚かだ。そう言えば体が熱い。寄り添われているからか。

「ふふ~、こうたは可愛いなぁ」

「…理解出来ないよ、君のことを俺は。」

タクシー乗り場には人が列を作っていた。ほんの一時の快楽に負けて、電車賃の何十倍を払って帰宅するこの行動は、やはり間違っている。それでも隣で勝手に俺に寄り添う彼女を置いていけなかった俺もまた、正しさの中にいないのか。

「奇遇だね、私もこうたを理解出来ないよ。」

漸く最前列になった。ロータリーをタクシーがまわっている。ヘッドライトを揺らしながら。未来をもし照らせるのなら、こんな間違いはもうしなくて済むのだろうか。俺はやはり、正しさを求めてしまうから。

「だからこうたのこと、好きになったんだ。」

タクシーに乗り込む手前、そう呟いた彼女の言葉を聞こえないふりをしてやり過ごす。俺の家の住所を告げ、そしてタクシーの扉がしまった。

動き出してすぐ、優希は俺に寄り添って寝息をたてはじめた。俺は使えなくなった左手を諦め、右手で携帯を操作して時間を潰す。

きっとこのタクシーの運転手には、俺達、俺のことがこのタクシーに乗っていた他の乗客達となんら相違なく見えているのだろう。それはとても悔しいことだが、隣で眠る彼女を愛しているうちは、いつまでも俺は間違っているのだろう。


車内から流れる景色を見て、俺もそっと目を閉じた。












目の前で泣き崩れる君を見て
初めて気付いたんだ
僕は君のこと なんにも考えてなかった

君を守りたいんだなんて言葉
この平和な世界で
僕は君のこと 何から守りたかったんだろう

君の声が心をうつたび
こんなにも僕は苦しくなるのに
ただ傍にいるだけじゃあ
特別なんかになれないんだ

君の代わりに僕が苦しむよ
もう涙なんか見せないで
君にそんな顔させたくて
僕はここにいる訳じゃない

君以外のものなんて
ここになくたって構わない
この胸の痛みも、苦しみも愛しさも
すべて差し出すから ねぇ、笑って?

止まない筈の雨には
僕が傘を差しておくから
冷めた君の身体は
僕の腕で暖めるから

特別なんかにならなくていい
もう涙なんか見せないで
君の為に生きた僕はきっと
世界で一番満たされているよ

ほら、漸く空が晴れて。
ねぇ、虹がキレイだね。


例えばあたし一人この星で生きていたとしたら、何てことを時々思う。
だって面倒くさくない?誰かと関わるのって。もしも誰もいなかったら、服を着たりおしゃれしたりもしないで、ただぶら~っと生きているだけでいいんだよ?
え?おしゃれが趣味ぃ?それって本当ぅ?
だって、その美的感覚とかって言うのは他者から与えられた外的要因をもとに基準が作られているよね?
犬や猫がかわいくて、どうしてゴリラやワニが可愛くないって言うのさ。あ、因みにあたしはワニ派ね。

とにもかくにも、見てもらえなくなったら楽しさ半減、違う?
…んー、まぁ違うってんならしょうがないよね。だって、あたしらは既に外的要因に毒されちゃってるわけだからねぇ。

くだらない?ふふ、そうでしょ?
あたしもたいくつでさぁ~、どうすればこの惰性で堕落した唾棄すべき妥協の連続を打開できるのか考え中。

…あ、ばれた?
せいかい。なーんもかんがえてませんよーぉだっ!


だって、必死になっちゃったら楽しいことも楽しくなくなっちゃうし。よく言うじゃない、ホントにプロになったらその仕事嫌いになっちゃってそのうち離れちゃう~ってやつ。まぁ贅沢な悩みに聞こえるけど、人間やっぱり一番は自分の時間でしょ。
かーのじょともかーれしともいちゃいちゃ出来ないんじゃあ、つらいよね。だから、きっとどんなものだって節度わきまえるべきなんだよ。人間それだけできるーって言ったって結局は総合力でしょ。顔がいいとか頭がいいとか、それだけで生きてる人も……まーいるか。

いるよね、たぶん。

あー怠惰だなぁ。
このままゆるーっと時が過ぎて、いつのまにかふわぁーって死んじゃいたい。
あたしはたぶんそれで満足だね。

……あ、そうだ。この前ついに買ってきたよー高級メロンパン!イヤー美味しかった。折角だから君にもあげようと思って持ってきたんだ。できたてじゃあないけどきっとおいしいよ。さ、食べて食べて!!

んーんー、やっぱ君はいい食べっぷりだ。
あたしご飯つくってあげたくなっちゃうなぁ。


ぱんぱんっ。
埃を払って立ち上がる。

はーい、お粗末様でした。
また今度ちがーうの買ってくるから、暇潰しの相手
、よろしくねー!!




「こんなところにいたか!おい恭子!早くもどれ、仕事は山積みだぞー!!」

彼が遠くの方へ去ったのと同時に、あたし以外の声が響いた。五月蝿い。そんなに叫ばなくてもちゃんと聞こえてるったら。

「忙しい時程休憩は大事だって言ってたじゃないすか主任。」

「相変わらず生意気な野郎だ!いいから来い!!」

「ちょちょちょっとちょっと~!?」

スーツの首根っこを摘ままれて引きずられる。まるで猫の様だ。あぁー猫になりたい~いやだ~しごとや~だ~。

「あたしゃやろうじゃなくてレディっすよー!!しかもそんなやらしいとこもってセクハラですかー!?」

「うるさい!!くちごたえと屁理屈の多い奴だったく…っ!!」


そう。そんなこと言いながらあたしは生きる為どうすべきかを理解している。

将来の夢?10年後のありたい姿?目標?
そんなものどーでもいい。いったいどれほどの価値になるって言うんですかー?って感じ。
今日を生きることで手一杯ですよ。ほんと。

そうだ。あたしにばっかり突っ掛かってくるあの上司をギャフンと言わせて、帰ったら美味しいプリンでも買って食べよう。
それが、あたしの幸せ。



今しか見えねぇよ!!
(キミのその悩みってさ、心が贅沢な証拠だよ)



(…たぶん。)







晴れわたる青空を見たとき
心が痛いのはなんでだろう。
泥の固まりみたいな心を
白日に晒してしまうから?

甘くて切ない時を過ごし
知らない内に大人になった。
私だってこの空の向こうがわ
貴方に会いに行けるのに。

分からないことが恐ろしくて、
きっと理解されないこの感情を
抱えて生きていかなくちゃ、
振り向いてくれないのですか?

いつだって何度も何度も繰り返すよ
嘘で塗り固めた愛を謳って
世界が真っ黒だったら
仲間外れなんていないのに
そうやって何度も何度も叫んでみるよ
心の内側に届く様に
貴方が何を欲しいかも知らないで
今日も、愛を語るんだ。


柔らかい風が頬を撫でる時
泣きそうになるのはなんでだろう。
数ミクロンで整えた外側が
ひび割れ朽ちてしまうから?

貴方の心を覗けたら
きっと何でもしてあげるのに
汚いところも知ってしまいそうで
手も触れられずにいるよ

いつだって何度も何度も繰り返すよ
自分のことさえわからずに
ただ、貴方を想うことで
今日も生き長らえてるよ
そうやって何度も何度も叫んでみるよ
それが真実に変わるように
貴方が誰といるのかさえ知らずに
今日も、傍にいるから。


何もみえないし、知らないよ
わかった気でいるだけなんだ
何もいらないし、不要だよ
この感情は、只の錯覚

いつだって何度も何度も繰り返すよ
誰もが使う言葉で愛を謳って
何も見えなきゃ、気付かなきゃ
世界は幸せで溢れてるのに
そうやって何度も何度も叫んでみるよ
すべてが嘘偽りだったとしても
貴方が欲しいと言う私を愛して
今日も、愛を語るんだ。


「ちょーっとストーーップ!!」

アタシはつい、大声を出していた。
今まさに覆い被さろうとしていた女の子をはねのけて、距離を置く。自然と戦闘体勢だ。

「なーによ鈴。何で逃げんのよ?」

悪びれた様子もない茜は、手に持った染髪用具をふるふる振った。

「いや、ごめんつい……」

「これ、直ぐやんないと上手くいかないんだから、モタモタしない。」

「なんか悪いことしてる気がしてさー…たはは……」

「みんなやってることでしょ?16歳にもなってなにビビってんのさ」

そういう茜の髪は、明るすぎるブラウンに染まっていた。
なんか柴犬を思い出す。
茜とは中学からの付き合いだが、彼女は俗に言う高校デビューを果たし、眼鏡はコンタクト綺麗な黒の長髪は犬っころカラー、もちもちほっぺはまっピンクのチョークで塗りまくられてた。
同じクラスのアタシ達は、当然の様につるんだ。
見た目は変わっても、彼女は彼女だから。

そして今は夏休み三日目。明日は海へ繰り出すんだそうだ。

「そ、そうはいっても……い、いきなり金は流石に……」

私は、どちらと言わなくても地味な女だ。鼻だって低くて潰れてるし、ほっぺたにはそばかすもある。最近の悩みは専ら、おでこのニキビだ。
そんな私が、化粧?染髪?高校デビュー?
無理無理無理。
大体若いうちからそういうことしてたらお肌に
ダメージダメージ!!
もしも、地味じゃなかったらー


……っは!!
いかんいかん、現実逃避してしまった。

「ね、ねぇ茜…?やっぱりなし…じゃダメ…?」

「うぇー?何々本当に?…まー、私は別にいいけど、それだとあんた多分海いけないよ?あーやが企画だから絶対男いるし。」

なんだそれ。初耳だ。
因みにあーやとは、うちのクラス……というか学年で一番クレイジーなギャルだ。正直近づきたくない人間ランキングだと堂々の一位。二位とは圧倒的差がある。3馬身くらい?
よーわからんけど。
さらによーわからんのは、何故かうちの茜とメチャクチャ仲がいい。
うちのとか言っちゃって。
つってつって。

「うん……じゃあ、いいかな……」

「は?」

「別に、今の私そのままで受け入れてくれない場所に、わざわざいきたくはない、かな。」

「おいおい私一人にするきかよーすずー!!」

「……あ、なら。茜も行かなきゃいいんじゃない?」

「はぁあ!?」

「二人でどっか買い物でも行こーよ。そっちの方が気が楽でしょ?」

「はぁ……あんたには勝てないよ私は。」

「にひひー」

そういうと、茜はおもむろにデコられたケータイを取りだしコールする。数回コールののち、電話口から声がした。

「あ、もしもしあーや?わりぃ、私ちょっとインフルくらっちゃったくさいからあしたいけねーや。うん、あともう一人連れてくっつったべ?そいつもNGで。ほんとわりぃ。治ったらめしおごっからさ。あーい、あい。んじゃ。」

ものの数秒だった。
茜は昔から決断の早いやつだったが。お見事。

「な、なんかごめん…」

「気にすんなって。正直私も乗り気じゃなかったし。夏男はちょっとパス。で、私風邪引いてるていだからこれからわたしん家行ってオールでももてつしよーももてつ!!久々に!!」

「おわーなつかし!!やろーやろー!!」

「よっしゃ!じゃ移動ね。……あ、すず、髪にちょこっとだけ染色液付いてるよ」

「へ?わーわー!!とってとってー!!」

肩先のちょこっとだけ、金色になってしまった。
でも、これくらいが私にはちょうどいい。


因みにだが、ももてつはドラマチック且つワンダフルな展開で大変エキサイトしたが、それはまた別で語るまでもないと思う。


おわり。

このページのトップヘ